おはなみざっかん
お花見雑感

冒頭文

四五年といふもの逗子の方へ行つてゐたので、お花見には御無沙汰した。全體彼地(あちら)では汐風が吹くせゐか木が皆小さくて稀に二三株有つても色も褪せて居るやうだから、摘草などをこそすれつい〳〵花を見る事は先づすくないのである、と言つて花時に出ても來ないし、愈々以て遠々しくは成つたものの、何もお花見だからと言つて異裝なんかする事はさう別に奬勵するにも及ばなければ、恐しく取緊る事もないと思ふ。さうしなけれ

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 鏡花全集 巻二十八
  • 岩波書店
  • 1942(昭和17)年11月30日