しゅにっき
朱日記

冒頭文

一 「小使(こづかい)、小ウ使。」 程もあらせず、……廊下を急いで、もっとも授業中の遠慮、静(しずか)に教員控所の板戸の前へ敷居越に髯面(ひげづら)……というが頤(あご)頬(ほお)などに貯えたわけではない。不精で剃刀(かみそり)を当てないから、むじゃむじゃとして黒い。胡麻塩頭(ごましおあたま)で、眉の迫った渋色の真正面(まっしょうめん)を出したのは、苦虫と渾名(あだな)の古物(こぶつ)、但

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 泉鏡花集成4
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1995(平成7)年10月24日