くさあやめ
草あやめ

冒頭文

二丁目の我が借家の地主、江戸児(えどつこ)にて露地を鎖さず、裏町の木戸には無用の者入(い)るべからずと式(かた)の如く記したれど、表門には扉さへなく、夜が更けても通行勝手なり。但(たゞ)知己(ちかづき)の人の通り抜け、世話に申す素通りの無用たること、我が思(おもひ)もかはらず、然(さ)りながらお附合五六軒、美人なきにしもあらずと雖(いへど)も、濫(みだり)に垣間見(かいまみ)を許さず、軒に御神燈の

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 日本の名随筆1 花
  • 作品社
  • 1983(昭和58)年2月25日