まゆかくしのれい
眉かくしの霊

冒頭文

一 木曾街道(きそかいどう)、奈良井(ならい)の駅は、中央線起点、飯田町(いいだまち)より一五八哩(マイル)二、海抜三二〇〇尺、と言い出すより、膝栗毛(ひざくりげ)を思う方が手っ取り早く行旅の情を催させる。 ここは弥次郎兵衛(やじろべえ)、喜多八(きだはち)が、とぼとぼと鳥居峠(とりいとうげ)を越すと、日も西の山の端(は)に傾きければ、両側の旅籠屋(はたごや)より、女ども立ち出(い

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 現代日本文学館3 幸田露伴・泉鏡花
  • 文藝春秋
  • 1968(昭和43)年10月1日