せいしょ
聖書

冒頭文

今日来て見ると、Kさんの書卓(デスク)の上に、ついぞ見なれぬ褐色のきたない三六版ほどの厚い書物(ほん)が載っていた。 「先生、それは何です?」と訊くと、 「まあ見たまえ」と、ワイルドの『デ・プロフンディス』や、Kさんの大好きなスウィンバアンやアーサア・シモンズの詩集の下から引出して、僕の手に渡してくれた。見るといかにも古色蒼然たるものだ。全部厚革で、製本はひどく堅牢だ。革はところどころはげ

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 日本の名随筆 別巻100 聖書
  • 作品社
  • 1999(平成11)年6月25日