今日来て見ると、Kさんの書卓(デスク)の上に、ついぞ見なれぬ褐色のきたない三六版ほどの厚い書物(ほん)が載っていた。 「先生、それは何です?」と訊くと、 「まあ見たまえ」と、ワイルドの『デ・プロフンディス』や、Kさんの大好きなスウィンバアンやアーサア・シモンズの詩集の下から引出して、僕の手に渡してくれた。見るといかにも古色蒼然たるものだ。全部厚革で、製本はひどく堅牢だ。革はところどころはげ