クララのしゅっけ
クララの出家

冒頭文

○ これも正しく人間生活史の中に起った実際の出来事の一つである。       ○ また夢に襲われてクララは暗い中(うち)に眼をさました。妹のアグネスは同じ床の中で、姉の胸によりそってすやすやと静かに眠りつづけていた。千二百十二年の三月十八日、救世主のエルサレム入城を記念する棕櫚(しゅろ)の安息日(あんそくび)の朝の事。 数多い見知り越しの男たちの中で如何(どう)いう訳か

文字遣い

新字新仮名

初出

「太陽」1917(大正6)年9月

底本

  • カインの末裔 クララの出家
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1940(昭和15)年9月10日、1980(昭和55)年5月16日第25刷改版