ゆうゆうそう
悠々荘

冒頭文

十月のある午後、僕等三人は話し合いながら、松の中の小みちを歩いていた。小みちにはどこにも人かげはなかった。ただ時々松の梢(こずえ)に鵯(ひよどり)の声のするだけだった。 「ゴオグの死骸を載(の)せた玉突台(たまつきだい)だね、あの上では今でも玉を突いているがね。……」 西洋から帰って来たSさんはそんなことを話して聞かせたりした。 そのうちに僕等は薄苔(うすごけ)のついた御影石

文字遣い

新字新仮名

初出

「サンデー毎日」1927(昭和2)年1月

底本

  • 芥川龍之介全集6
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1987(昭和62)年3月24日