はんしちとりものちょう 35 はんしちせんせい
半七捕物帳 35 半七先生

冒頭文

一 わたしがいつでも通される横六畳の座敷には、そこに少しく不釣合いだと思われるような大きい立派な額(がく)がかけられて、額には草書(そうしょ)で『報恩額』と筆太(ふでぶと)にしるしてあった。嘉永庚戌(かのえいぬ)、七月、山村菱秋書という落款(らくかん)で、半七先生に贈ると書いてあるのも何だかおかしいようにも思われた。この額のいわれを一度きいて見ようと思いながら、いつもほかの話にまぎれて忘れて

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 時代推理小説 半七捕物帳(三)
  • 光文社時代小説文庫、光文社
  • 1986(昭和61)年5月20日