うんどうかいのふうけい
運動会の風景

冒頭文

上 あくまでも蒼く晴れ上つた空であり、渓谷には微風さへもない。 表で遊んでゐる子等が「春が来た、春が来た」と唄ひ出した。十一月三日の明治節の国民運動会の日である。 木曾川は底まで澄みきつて、両岸の紅葉を映してゐる。 私が此夏、鮎釣りに泳ぎ渡つた際、大きな蟻に臍を食ひつかれて愕いた、竜宮岩も紅葉の間に浮んで、静もりかへつてゐる。 竜宮岩といふのは、木曾川

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 日本の名随筆19 秋
  • 作品社
  • 1984(昭和59)年5月25日