とうきょうだより
東京だより

冒頭文

東京は、いま、働く少女で一ぱいです。朝夕、工場の行き帰り、少女たちは二列縦隊に並んで産業戦士の歌を合唱しながら東京の街を行進します。ほとんどもう、男の子と同じ服装をしています。でも、下駄(げた)の鼻緒(はなお)が赤くて、その一点にだけ、女の子の匂(にお)いを残しています。どの子もみんな、同じ様な顔をしています。年の頃さえ、はっきり見当がつきません。全部をおかみに捧げ切ると、人間は、顔の特徴も年恰好

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 太宰治全集6
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1989(平成元)年2月28日