たに

冒頭文

楢渡(ならわたり)のとこの崖(がけ)はまっ赤でした。 それにひどく深くて急でしたからのぞいて見ると全くくるくるするのでした。 谷底には水もなんにもなくてたゞ青い梢(こずゑ)と白樺(しらかば)などの幹が短く見えるだけでした。 向ふ側もやっぱりこっち側と同じやうでその毒々しく赤い崖には横に五本の灰いろの太い線が入ってゐました。ぎざぎざになって赤い土から喰(は)み出してゐた

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 新修宮沢賢治全集 第九巻
  • 筑摩書房
  • 1979(昭和54)年7月15日