はんしちとりものちょう 33 たびえし |
半七捕物帳 33 旅絵師 |
冒頭文
一 「江戸時代の隠密(おんみつ)というのはどういう役なんですね」と、ある時わたしは半七老人に訊(き)いた。 「芝居や講釈でも御存知の通り、一種の国事探偵というようなものです」と、老人は答えた。「徳川幕府で諸大名の領分へ隠密を入れるというのは、むかしから誰も知っていることですが、その隠密は誰がうけたまわって、どういう役目を勤めるかということがよく判っていないようです。この隠密の役目を勤めるのは、
文字遣い
新字新仮名
初出
底本
- 時代推理小説 半七捕物帳(三)
- 光文社時代小説文庫、光文社
- 1986(昭和61)年5月20日