すいれん
睡蓮

冒頭文

() もう十四年も前のことである。家を建てるとき大工が土地をどこにしようかと相談に来た。特別どこが好きとも思いあたらなかったから、恰好(かっこう)なところを二三探して見てほしいと私は答えた。二三日してから大工がまた来て、下北沢(しもきたざわ)という所に一つあったからこれからそこを見に行こうという。北沢といえば前にたしか一度友人から、自分が家を建てるなら北沢へんにしたいと洩(も)らしたのを思い出し

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 機械・春は馬車に乗って
  • 新潮文庫、新潮社
  • 1969(昭和44)年8月20日