さいてゆくはな
咲いてゆく花

冒頭文

少女は、横になって隅の方に——、殆ど後から見た時にはランプの影になって、闇がどうしてもその本の表を見せまいと思われる所で、一心になって小説をよみふけっていた。 明日からつゞく夏休(なつやすみ)の安らかさと、大きな自由との為めに、少女はいま心一っぱいに、小説のなかのかなしいなつかしい少年とその家庭とについていつまでもいつまでも涙ぐむことが出来るのだった。そして自分の現在のすべてを幻のように

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 北海道文学全集 第四巻
  • 立風書房
  • 1980(昭和55)年4月10日