くうをとぶパラソル
空を飛ぶパラソル

冒頭文

その一 空(くう)を飛ぶパラソル 水蒸気を一パイに含んだ梅雨(つゆ)晴れの空から、白い眩(まぶ)しい太陽が、パッと照り落ちて来る朝であった。 ちょうど農繁期で、地方新聞の読者がズンズン減って行くばかりでなく、新聞記事(だね)の夏枯れ季節(どき)に入りかけた時分なので、私のいる福岡時報は勿論のこと、その他の各社とも何かしら読者を惹き付ける大記事は無いか……洪水(おおみず)は出ないか…

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 夢野久作全集4
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1992(平成4)年9月24日