お作が故郷を出てこの地に来てから、もう一年になる。故郷には親がいるではない、家があるではない、力になる親類とてもない、村はずれの土手下の一軒家、壁は落ち、屋根は漏(も)り、畳は半ば腐れかけて、茶の間の一間は藁(わら)が敷き詰めてある。この一軒家の主が、お作のためには、天にも地にもただ一人の親身の叔父(おじ)で、お作はここで娘になった。 ぼろぼろの襤褸(つづれ)を着て、青い鼻洟(はな)を垂