なまけものとあめ
なまけ者と雨

冒頭文

降るか照るか、私は曇日を最も嫌ふ。どんよりと曇つて居られると、頭は重く、手足はだるく眼すらはつきりとあけてゐられない様な欝陶しさを感じがちだ。無論為事は手につかず、さればと云つてなまけてゐるにも息苦しい。 それが静かに四辺(あたり)を濡らして降り出して来た雨を見ると、漸く手足もそれ〴〵の場所に帰つた様に身がしまつて来る。 机に向ふもいゝし、寝ころんで新聞を繰りひろげるもよい。何

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 日本の名随筆43 雨
  • 作品社
  • 1986(昭和61)年5月25日