はんしちとりものちょう 40 いじんのくび
半七捕物帳 40 異人の首

冒頭文

一 文久元年三月十七日の夕六ツ頃であった。半七が用達(ようたし)から帰って来て、女房のお仙と差し向いで夕飯をくっていると、妹のお粂がたずねて来た。お粂は文字房という常磐津の師匠で、母と共に外神田の明神下に暮らしていることはすでに紹介した。 「いい陽気になりました」と、お粂はまだ白い歯をみせて笑いながら会釈(えしゃく)した。「姉さん。今年はもうお花見に行って……」 「いいえ、どこへも…

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 時代推理小説 半七捕物帳(三)
  • 光文社時代小説文庫、光文社
  • 1986(昭和61)年5月20日