ふたりのやくにん
二人の役人

冒頭文

その頃(ころ)の風穂(かぜほ)の野はらは、ほんたうに立派でした。 青い萱(かや)や光る茨(いばら)やけむりのやうな穂を出す草で一ぱい、それにあちこちには栗(くり)の木やはんの木の小さな林もありました。 野原は今は練兵場や粟(あは)の畑や苗圃(なへばたけ)などになってそれでも騎兵の馬が光ったり、白いシャツの人が働いたり、汽車で通ってもなかなか奇麗ですけれども、前はまだまだ立派でし

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 新修宮沢賢治全集 第九巻
  • 筑摩書房
  • 1979(昭和54)年7月15日