ひながたり
雛がたり

冒頭文

雛(ひな)——女夫雛(めおとびな)は言うもさらなり。桜雛(さくらびな)、柳雛(やなぎびな)、花菜(はなな)の雛、桃の花雛(はなびな)、白と緋(ひ)と、紫(ゆかり)の色の菫雛(すみれびな)。鄙(ひな)には、つくし、鼓草(たんぽぽ)の雛。相合傘(あいあいがさ)の春雨雛(はるさめびな)。小波(ささなみ)軽く袖(そで)で漕(こ)ぐ浅妻船(あさづまぶね)の調(しらべ)の雛。五人囃子(ごにんばやし)、官女(か

文字遣い

新字新仮名

初出

「新小説」1917(大正6年)3月

底本

  • 鏡花短篇集 川村二郎編
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1987(昭和62)年9月16日