ごうがい
号外

冒頭文

ぼろ洋服を着た男爵加藤(かとう)が、今夜もホールに現われている。彼は多少キじるしだとの評がホールの仲間にあるけれども、おそらくホールの御連中にキ的傾向を持っていないかたはあるまいと思われる。かく言う自分もさよう、同類と信じているのである。 ここに言うホールとは、銀座何丁目の狭い、窮屈な路地にある正宗(まさむね)ホールの事である。 生一本(きいっぽん)の酒を飲むことの自由自在、孫

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 号外・少年の悲哀 他六編
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1939(昭和14)年4月17日、1960(昭和35)年1月25日第14刷改版