ごいしをのんだやっちゃん
碁石を呑んだ八っちゃん

冒頭文

八(や)っちゃんが黒い石も白い石もみんなひとりで両手でとって、股(もも)の下に入れてしまおうとするから、僕は怒ってやったんだ。 「八っちゃんそれは僕んだよ」 といっても、八っちゃんは眼(め)ばかりくりくりさせて、僕の石までひったくりつづけるから、僕は構わずに取りかえしてやった。そうしたら八っちゃんが生意気に僕の頬(ほっ)ぺたをひっかいた。お母さんがいくら八っちゃんは弟だから可愛(かあい

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 一房の葡萄 他四篇
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1988(昭和63)年12月16日改版第1刷