はんしちとりものちょう 30 あまざけうり |
半七捕物帳 30 あま酒売 |
冒頭文
一 「また怪談ですかえ」と、半七老人は笑った。「時候は秋で、今夜は雨がふる。まったくあつらえ向きに出来ているんですが、こっちにどうもあつらえむきの種がないんですよ。なるほど、今とちがって江戸時代には怪談がたくさんありました。わたくしもいろいろの話をきいていますが、商売の方で手がけた事件に怪談というのは少ないものです。いつかお話した津の国屋だって、大詰へ行くとあれです」 「しかし、あの話は面白う
文字遣い
新字新仮名
初出
底本
- 時代推理小説 半七捕物帳(三)
- 光文社時代小説文庫、光文社
- 1986(昭和61)年5月20日