あだうちきんしれい
仇討禁止令

冒頭文

一 鳥羽伏見の戦で、讃岐(さぬき)高松藩は、もろくも朝敵の汚名を取ってしまった。 祖先が、水戸黄門光圀の兄の頼重(よりしげ)で、光圀が後年伯夷叔斉(はくいしゅくせい)の伝を読み、兄を越えて家を継いだことを後悔し、頼重の子綱条(つなえだ)を養って子とし、自分の子鶴松を高松に送って、嗣子たらしめた。 だから、高松藩は、徳川宗家にとっては御三家に次ぐ親しい間柄である。従って、維

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 菊池寛 短篇と戯曲
  • 文芸春秋
  • 1988(昭和63)年3月25日