に、さんば――じゅうに、さんば
二、三羽――十二、三羽

冒頭文

引越しをするごとに、「雀(すずめ)はどうしたろう。」もう八十幾(いく)つで、耳が遠かった。——その耳を熟(じっ)と澄ますようにして、目をうっとりと空を視(なが)めて、火桶(ひおけ)にちょこんと小さくいて、「雀はどうしたろうの。」引越しをするごとに、祖母のそう呟(つぶや)いたことを覚えている。「祖母(おばあ)さん、一所(いっしょ)に越して来ますよ。」当てずッぽに気安めを言うと、「おお、そうかの。」と

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 鏡花短篇集
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1987(昭和62)年9月16日