はんしちとりものちょう 57 ゆうれいのみせもの
半七捕物帳 57 幽霊の観世物

冒頭文

一 七月七日、梅雨(つゆ)あがりの暑い宵であったと記憶している。そのころ私は銀座の新聞社に勤めていたので、社から帰る途中、銀座の地蔵の縁日をひやかして歩いた。電車のまだ開通しない時代であるから、尾張町の横町から三十間堀の河岸(かし)へかけて、いろいろの露店がならんでいた。河岸の方には観世物(みせもの)小屋と植木屋が多かった。 観世物は剣舞、大蛇(だいじゃ)、ろくろ首のたぐいである。

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 時代推理小説 半七捕物帳(五)
  • 光文社時代小説文庫、光文社
  • 1986(昭和61)年10月20日