はんしちとりものちょう 18 やりつき
半七捕物帳 18 槍突き

冒頭文

一 明治廿五年の春ごろの新聞をみたことのある人たちは記憶しているであろう。麹町(まち)の番町(ちょう)をはじめ、本郷、小石川、牛込などの山の手辺で、夜中に通行の女の顔を切るのが流行(はや)った。若い婦人が鼻をそがれたり、頬を切られたりするのである。幸いにふた月三月でやんだが、その犯人は遂に捕われずに終った。 その当時のことである。わたしが半七老人をたずねると、老人も新聞の記事でこの

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 時代推理小説 半七捕物帳(二)
  • 光文社時代小説文庫、光文社
  • 1986(昭和61)年3月20日