はんしちとりものちょう 67 うすぐものごばん |
半七捕物帳 67 薄雲の碁盤 |
冒頭文
一 ある日、例のごとく半七老人を赤坂の家にたずねると、老人はあたかも近所の碁会所から帰って来た所であった。 「あなたは碁がお好きですか」と、わたしは訊いた。 「いいえ、別に好きという程でもなく、いわゆる髪結床(かみゆいどこ)将棋のお仲間ですがね」と、半七老人は笑った。「御承知の通りの閑人(ひまじん)で、からだの始末に困っている。といって、毎日あても無しにぶらぶら出歩いてもいられないの
文字遣い
新字新仮名
初出
底本
- 時代推理小説 半七捕物帳(六)
- 光文社時代小説文庫、光文社
- 1986(昭和61)年12月20日