はんしちとりものちょう 19 おてるのちち
半七捕物帳 19 お照の父

冒頭文

一 「いつか向島でお約束をしたことがありましたっけね」 「お約束……。なんでしたっけ」と、半七老人は笑いながら首をかしげていた。 「そら、向島で河童(かっぱ)と蛇の捕物の話。あれをきょう是非うかがいたいんです」 「河童……。ああ、なるほど。あなたはどうも覚えがいい。あれはもう去年のことでしたろう。しかも去年の桜どき——とんだ保名(やすな)の物狂いですね。なにしろ、そう強情(ごうじょう)にお

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 時代推理小説 半七捕物帳(二)
  • 光文社時代小説文庫、光文社
  • 1986(昭和61)年3月20日