はんしちとりものちょう 49 おおさかやかちょう
半七捕物帳 49 大阪屋花鳥

冒頭文

一 明治三十年三月十五日の暁方(あけがた)に、吉原仲(なか)の町(ちょう)の引手茶屋桐半の裏手から出火して、廓内(かくない)百六十戸ほどを焼いたことがある。無論に引手茶屋ばかりでなく、貸座敷も大半は煙りとなって、吉原近来の大火と云われた。それから四、五日の後に半七老人を訪問すると、老人は火事の噂をはじめた。 「吉原がたいそう焼けたそうですね。あなたにお係り合いはありませんか」 「御冗

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 時代推理小説 半七捕物帳(四)
  • 光文社時代小説文庫、光文社
  • 1986(昭和61)年8月20日