はんしちとりものちょう 01 おふみのたましい |
半七捕物帳 01 お文の魂 |
冒頭文
一 わたしの叔父は江戸の末期に生れたので、その時代に最も多く行はれた化物屋敷の不入(いらず)の間や、嫉み深い女の生靈(いきりやう)や、執念深い男の死靈や、さうしたたぐひの陰慘な幽怪な傳説を澤山(たくさん)に知つてゐた。しかも叔父は「武士たるものが妖怪などを信ずべきものでない。」といふ武士的教育の感化から、一切これを否認しようと努めてゐたらしい。その氣風は明治以後になつても失せなかつた。わたし
文字遣い
旧字旧仮名
初出
底本
- 定本・半七捕物帳 第1巻
- 同光社
- 1950(昭和25)年1月25日