はんしちとりものちょう 08 おびとりのいけ
半七捕物帳 08 帯取りの池

冒頭文

一 「今ではすっかり埋められてしまって跡方も残っていませんが、ここが昔の帯取りの池というんですよ。江戸の時代にはまだちゃんと残っていました。御覧なさい。これですよ」 半七老人は万延版の江戸絵図をひろげて見せてくれた。市ヶ谷の月桂寺の西、尾州家の中屋敷の下におびとりの池という、かなり大きそうな池が水色に染められてあった。 「京都の近所にも同じような故蹟があるそうですが、江戸の絵図に

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 時代推理小説 半七捕物帳(一)
  • 光文社時代小説文庫、光文社
  • 1985(昭和60)年11月20日