にほんさんもんオペラ |
日本三文オペラ |
冒頭文
白い雲。ぽつかり広告軽気球が二つ三つ空中に浮いてゐる。——東京の高層な石造建築の角度のうちに見られて、これらが陽の工合でキラキラと銀鼠色に光つてゐる有様は、近代的な都市風景だと人は云つてゐる。よろしい。我々はその「天勝大奇術」又は「何々カフェー何日開店」とならべられた四角い赤や青の広告文字をたどつて下りて行かう。歩いてゐる人々には見えないが、その下には一本の綱が垂れさがつてゐて、風に大様に揺れてゐ
文字遣い
新字旧仮名
初出
底本
- 現代文学大系 44 武田麟太郎・島木健作・織田作之助集
- 筑摩書房
- 1967(昭和42)年3月